本計画では、既存の土壁と同等のせん断剛性を持つスチールフレーム「耐震シェルフ」を採用し、建築と家具の間のスケールで耐震補強を行う。面材や筋交いのような高剛性の補強を施すと応力集中が発生し、境界梁に悪影響を及ぼす恐れがあるため、柔軟な構造体を挿入することで既存を含めた耐震要素にバランスよく地震力を分担させ、既存躯体への負担を抑えている。
耐震シェルフは梯子状に組まれたスチールフレームで構成され、建築家との対話を重ねながら、棚としての使用性を確保しつつ、既存の土壁(壁倍率1.5倍)と同等のせん断剛性を持つ断面および横架材の配置を決定した。最上段の横架材は既存躯体と木ねじで固定し、簡易な接合方法によりせん断力を伝達する。鉛直材に生じる引抜き力は、引きボルトを介して上下階の耐震シェルフで直接伝達し、圧縮力は横架材のめり込みを利用して伝達する。脚部に生じる軸力は、土間下に配置された新設基礎によって処理しており、既存躯体への影響を極力抑えた設計となっている。
また、耐震シェルフを一定のリズムで配置することで建築に方向性を持たせ、視線の抜けを確保しながら開放的な空間を実現する。さらに、既存躯体解体時に生じた床材を配置することで自由に棚として利用可能となっている。


敷地:京都府京都市
構造:木造 + 鉄骨造
意匠設計:STUDIO WASABI,川上聡建築設計事務所
施工:晴耕舎